病院、介護、年金、働き方、出産、子育て――。私たちの人生のほとんどの場面に関わっているのが、「厚生労働省(こうせいろうどうしょう)」です。略して「厚労省(こうろうしょう)」とも呼ばれます。
医療や福祉、雇用といった“人の生活に直結する分野”を担当する厚労省は、まさに「いのちと暮らしの省庁」。今回は、その幅広い仕事をやさしく整理してみましょう。
厚生労働省の成り立ち
厚労省は2001年、旧「厚生省」と「労働省」が統合されて誕生しました。医療や福祉といった“支える政策”と、働く環境を整える“労働政策”を一体的に進めることを目的としています。
「健康」「福祉」「労働」――人の一生に寄り添う政策をまとめたのが厚生労働省です。
主な仕事
厚生労働省の仕事はとても広く、多くの分野にまたがります。ここでは代表的な4つを紹介します。
① 医療・公衆衛生
病院・クリニックの運営基準や医療制度を整備し、すべての人が安心して医療を受けられる環境をつくります。感染症対策や医薬品の安全管理も重要な仕事です。
コロナ禍で中心的な役割を果たしたのも厚労省。医療体制やワクチン接種の調整などを担いました。
② 年金・社会保障
高齢者の生活を支える年金制度、生活保護、障害者福祉なども厚労省の管轄です。人口減少や高齢化に対応するため、制度の見直しも続けられています。
③ 労働・雇用政策
働く人を守るための法律や制度を整備します。最低賃金、労働基準、働き方改革、ハラスメント防止など、企業と労働者の間に立って調整する役割です。
④ 子育て・福祉政策
保育、介護、障害福祉など、支援が必要な人を支える制度も厚労省の領域です。子ども家庭庁と連携し、子育て世代を幅広く支援しています。
医療と福祉のつながり
厚労省の特徴は、「医療」と「福祉」がひとつの省庁でつながっていること。たとえば、高齢者が退院したあとも地域で生活できるよう、介護・医療・住まいを一体的に支援する「地域包括ケアシステム」などを推進しています。
“治す”だけでなく、“支える”。医療から福祉まで切れ目のないサポートを整えるのが厚労省の考え方です。
働き方改革と雇用の未来
少子高齢化が進む中、働く人をどう支えるかも大きな課題です。厚労省は「働き方改革」を進め、長時間労働の是正やテレワークの普及を推進しています。
また、非正規雇用やフリーランスなど、多様な働き方に対応する制度設計も進めています。
「働きやすさ」と「働きがい」の両立――。これも厚労省の掲げるテーマのひとつです。
少子高齢化という課題
日本が直面する最大の社会問題のひとつが「少子高齢化」。
厚労省は、出生率の低下に対応しつつ、高齢者の生活を支える仕組みを整えようとしています。
- 保育・介護人材の確保
- 医療費・年金財政の安定化
- 働きながら介護できる社会の実現
人口構造の変化は、社会全体の“設計の見直し”を迫る問題。厚労省はまさにその最前線に立っています。
デジタル化との連携
最近では、デジタル庁と協力して「オンライン診療」や「電子カルテの標準化」なども進んでいます。これにより、医療データを活用した診療や、地域間での情報共有が可能になります。
また、雇用分野でもAIを活用した職業紹介や、リスキリング(学び直し)支援の仕組みが整備されています。
厚労省のデジタル化は、“現場を支える人を支える”ための手段でもあります。
まとめ
厚生労働省は、人の一生を支える“暮らしの省庁”。医療・年金・労働・福祉といった社会の根幹を担い、誰もが安心して生きられる社会を目指しています。
次回は、「文部科学省」。教育や研究、文化など、“未来を育てる”省庁の役割を見ていきましょう。