企業の支援、エネルギー政策、スタートアップ、ものづくり――。日本経済を動かす中心的な役割を担っているのが「経済産業省(けいざいさんぎょうしょう)」です。略して「経産省(けいさんしょう)」と呼ばれます。
経産省は、産業を育て、働く人と企業を支え、社会全体の成長を促す“日本経済のエンジン”。今回は、その仕組みとこれからの挑戦をやさしく解説します。
経産省の成り立ち
経産省は2001年、旧「通商産業省(通産省)」を引き継ぐ形で誕生しました。戦後の日本経済を立て直した通産省の流れを汲み、今も「産業政策」と「通商(貿易)政策」を担っています。
「国内の産業を育てる」と「海外との貿易を広げる」――この二つをバランスよく進めるのが経産省の使命です。
主な仕事
経済産業省の業務は多岐にわたりますが、大きく分けると次の4つが柱です。
① 産業の育成と企業支援
中小企業の支援、スタートアップの育成、デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などを行います。補助金制度や経営相談など、企業の成長を後押ししています。
企業が挑戦しやすい環境を整える――それが経産省の役割です。
② エネルギー政策
石油・電力・再生可能エネルギーなど、エネルギーの安定供給を担当します。環境省と連携しながら、脱炭素社会の実現も目指しています。
③ 貿易・国際経済
日本企業の海外展開を支援し、自由貿易協定(FTA・EPA)を通じて国際経済のルールづくりにも関わります。世界経済の動向を踏まえた戦略的な外交を進めるのも経産省の仕事です。
④ 地域・雇用・消費者政策
地方の産業振興や観光政策、消費者保護も担当します。特に「地方創生」の分野では、地域の特産品や企業のブランド化を支援しています。
エネルギーを支える仕組み
経産省には「資源エネルギー庁」という外局があります。ここでは、電力・ガス・石油などの供給体制を監督し、エネルギーの安定と安全を確保しています。
冬の電力ひっ迫や、燃料価格の高騰――こうした課題の裏には、資源エネルギー庁の調整があります。
再生可能エネルギー(太陽光・風力など)の導入促進や、原子力発電の安全性確保も重要なテーマです。
経産省とスタートアップ
近年、経産省はスタートアップ支援に力を入れています。ベンチャー企業が生まれ育つための資金支援、海外展開、規制緩和などの施策を進めています。
また、デジタル庁や総務省と連携し、IT・AI分野での新産業育成にも取り組んでいます。
「新しい産業をどう育てるか」が、経産省の成長戦略の核心です。
経済安全保障という新しいテーマ
経産省は近年、「経済安全保障」という新しい分野にも注力しています。これは、重要な技術や資源を外国に依存しすぎないようにする取り組みです。
半導体、レアアース、エネルギー供給網など――国家の安全にも関わる経済のリスクを減らすことが目的です。
経済のグローバル化が進むほど、“守るための経済政策”が重要になっています。
経産省のこれから
経産省は今、「グリーン×デジタル」をキーワードに、環境と経済の両立を目指しています。GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて、持続可能な成長を実現しようとしています。
経産省は“未来の産業をつくる省庁”。その政策は、働き方・エネルギー・地域のあり方にまで影響します。
まとめ
経済産業省は、企業と産業を育て、日本経済の土台を支える“成長のエンジン”。エネルギー、貿易、テクノロジー、地域振興など、私たちの暮らしのすみずみでその政策が動いています。
次回は、「財務省」。国のお金をどう集め、どう使うのか――経済と財政の関係を見ていきましょう。