子育て支援、児童福祉、教育、医療――。これまでさまざまな省庁が別々に担当していた分野を、ひとつにまとめたのが「子ども家庭庁(こどもかていちょう)」です。
2023年4月に誕生したばかりの新しい庁で、内閣府の外局として設置されました。スローガンは「こどもまんなか社会」。子どもや家庭をめぐる支援を“縦割り”から“ひとつの流れ”にすることを目的としています。
子ども家庭庁ができた背景
これまでの日本では、子どもに関する政策が複数の省庁に分かれていました。
- 教育 → 文部科学省
- 医療・福祉 → 厚生労働省
- 少子化対策 → 内閣府
その結果、支援が複雑で分かりづらくなり、家庭の立場から見ると「どこに相談すればいいのか分からない」という課題がありました。こうした現状を変えるために、子ども家庭庁が新設されたのです。
「子どもを真ん中に置く」という発想から、行政の仕組みを見直す――。それが子ども家庭庁の出発点です。
子ども家庭庁の主な仕事
子ども家庭庁は、大きく3つの柱で動いています。
① 子ども・子育て支援
妊娠・出産・育児を支える制度を整備します。保育所の待機児童対策、育児休業の取得促進、子育て世代への経済的支援などが中心です。
② 児童福祉・虐待防止
児童相談所や自治体と連携し、虐待防止や貧困対策、子どもの安全確保を推進します。子どもが安心して育てる環境づくりが目標です。
③ 若者・教育支援
不登校、ヤングケアラー、いじめなど、成長段階での課題にも対応します。教育や福祉の枠を超え、包括的にサポートするのが特徴です。
「子育て世帯」だけでなく、「子ども本人」にも焦点を当てているのが大きなポイントです。
こども基本法と「こどもまんなか社会」
子ども家庭庁の設立と同時に施行されたのが、「こども基本法」です。これは、子どもを“権利の主体”として明確に位置づけた日本初の法律です。
この法律によって、
- 子どもの意見を尊重する
- 子どもの最善の利益を最優先にする
- 子どもに関する政策を総合的に進める
という原則が定められました。
「子どものために何かをしてあげる」ではなく、「子どもの声を聞き、ともに社会をつくる」へ。価値観の転換が起きています。
支援が届きやすくなる仕組み
子ども家庭庁は、地方自治体との連携を重視しています。各自治体に「こども家庭センター」などの拠点を設け、相談・支援のワンストップ化を進めています。
たとえば、
- 妊娠期からの切れ目ない支援(母子保健・医療・保育の連携)
- 経済的に困難な家庭への支援金制度
- 教育・医療・福祉の情報共有
「どこに相談したらいいか分からない」をなくすことが、子ども家庭庁の大きなミッションです。
デジタル化による支援の効率化
デジタル庁と連携し、マイナンバーを活用した支援情報の一元化も進めています。これにより、行政手続きの手間が減り、支援がスムーズにつながるようになります。
「子ども家庭庁 × デジタル庁」という組み合わせが、今後の行政DXの鍵にもなっています。
課題とこれから
子ども家庭庁はまだ発足して間もない庁です。そのため、制度の運用や現場との連携など、課題も多く残っています。
たとえば、
- 支援の担い手(自治体・専門職)の確保
- 現場との情報共有の難しさ
- 予算の確保と持続的な運営
こうした課題を乗り越えることで、より実効性のある政策が実現されていくと期待されています。
制度ができても「現場に届かない」ままでは意味がありません。子ども家庭庁の真価は、これから問われていきます。
まとめ
子ども家庭庁は、「子どもを中心に置いた社会」をつくるための新しい庁です。教育・福祉・医療をまたぐ支援を一本化し、誰もが安心して子育てできる社会を目指しています。
次回は、「デジタル庁」について。行政手続きやサービスを“もっと使いやすく”するために、どんな取り組みが進んでいるのかを見ていきましょう。