ニュースで「市議会」「県議会」という言葉を聞いても、何をしている場所なのかピンとこないという人は多いかもしれません。「国会と何が違うの?」「二元代表制ってなに?」——今回は、そんな疑問をやさしく整理していきます。
国会と地方議会、どう違うの?
まず、ざっくり言うと国会は“国のルール”を決める場所、地方議会は“地域のルール”を決める場所です。
国会では、全国に共通する法律や予算をつくります。いわば「日本全体の方針会議」。 一方、地方議会は、都道府県や市区町村の“暮らしに直結するルール”を決める場です。たとえば、学校給食の方針やゴミ出しのルール、防災体制、地域の交通整備など。身近な課題を扱うのが特徴です。
国会=全国のルールを決める「法律工場」
地方議会=地域の暮らしを守る「まちの作戦会議」
もうひとつ大きな違いは、「リーダーの選ばれ方」です。ここに“二元代表制”というキーワードが出てきます。
二元代表制ってなに?
国会では、議員の中から総理大臣が選ばれます。つまり、「議会(立法)」と「内閣(行政)」がつながっている仕組みです。これを「一元代表制」と呼びます。
一方で、地方政治では、首長(知事や市長)と議会のメンバーが、別々に選ばれるのが基本です。これが「二元代表制」です。
二元代表制:首長と議会の両方が、住民の直接選挙で選ばれる仕組み。それぞれが“地域の代表”として対等な立場で活動します。
たとえば、市長が「公園を増やそう」という予算を提案したとします。議会はその案をチェックし、必要なら修正したり、もっと良い案を出したりします。どちらか一方が決めるのではなく、お互いに見張り合う関係なんです。
首長=市や県の“リーダー”
議会=地域の“みんなの意見を集めるチーム”
どちらも住民の代表なので、けん制しながらも協力し合うことが大切です。
なぜ二元代表制が大事なの?
一見まわりくどく見えるこの仕組み、実はとても大切な理由があります。
もし首長(市長や知事)にすべての権限が集中していたら、どうなるでしょう? 判断を誤ったときにブレーキがかけられません。逆に、議会だけに決定権があれば、実行力がなくなってしまいます。
二元代表制は、「権力のバランスを取るための安全装置」。お互いにチェックし合うことで、政治が一方に偏らないようにしています。
たとえば、市長が「新しい施設をつくる」と提案したとき、議会が「予算や場所は適切か?」と確認します。逆に、議会が「防災対策を強化したい」と意見を出せば、市長が実行計画を立てます。まさにキャッチボールのような関係なんです。
地方議会の「今」とこれから
地方議会の課題としてよく挙げられるのが、議員のなり手不足や出席率の低下です。選挙の投票率も下がっていて、「自分には関係ない」と感じている人も多いのが現実です。
でも実際は、地方議会が決めることほど、生活に直結するものはありません。保育料、防災、道路整備、福祉——どれも毎日の暮らしとつながっています。
地方議員は、地域の小さな声を拾って行政に届ける“通訳者”のような存在。あなたの街の困りごとを、政策につなげる役割を持っています。
最近では、オンライン配信で議会を見られる自治体も増えてきました。ニュースで「議会」と聞いたら、一度のぞいてみるのもおすすめです。
まとめ:地方議会は、私たちの「となり」で動いている
地方議会は、遠い存在ではなく、私たちの暮らしのすぐそばで動いている場所です。道路の整備も、学校の給食も、防災体制も、すべてこの“まちの作戦会議”から生まれます。
首長と議会がそれぞれの立場から意見を交わし、よりよい地域をつくる。それが二元代表制の意味であり、私たちの民主主義を支える大事なしくみです。
次にニュースで「議会」という言葉を聞いたら、「あ、あれは私たちの街の話なんだ」と、少しだけ身近に感じてみてください。