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世襲議員が多いのはなぜ?

2025年10月30日 みんなのギモン

二世じゃないと政治家にはなれないの?

政治のニュースで、ある議員が「父の地盤を引き継いだ」「祖父も元大臣だった」と聞くことは少なくありません。
特に総理大臣の多くが「世襲議員」であることに驚いた人も多いでしょう。
では、なぜ日本ではこれほどまでに「政治家一家」が多いのでしょうか?

世襲議員とは?

「世襲議員」とは、親や祖父母などが国会議員や地方議員を務めていた家庭に生まれ、その地盤を受け継いで立候補する政治家のことです。
自民党などの主要政党では、国会議員の約3割が世襲出身とされています。
つまり、3人に1人は政治家の家に生まれた人ということです。

注記注記

「世襲=悪」ではなく、「なぜそうなりやすいのか」を理解することが大切です。

お金と選挙の“高い壁”

まず大きな要因は、選挙にかかる費用の高さです。
国政選挙に出馬するには、供託金だけで300万円(比例代表は600万円)必要です。
さらに選挙活動に伴う車代・ポスター・スタッフ人件費などを合わせると、数千万円単位になることもあります。
この費用を個人でまかなうのは、ほとんどの人にとって現実的ではありません。

一方で、政治家の家に生まれた人は、後援会や支援団体、寄付の仕組みがすでに整っています。
選挙のたびにゼロから始める必要がなく、資金面のハードルを大きく下げられるのです。

ヒントヒント

選挙の「供託金」は、得票率が一定に満たないと没収されます。つまり「落ちたらお金も戻らない」制度です。

地盤・看板・鞄の“三バン”

政治の世界では昔から、「地盤・看板・鞄」が重要と言われます。

  • 地盤(じばん):地域に根付いた後援会や支持者ネットワーク
  • 看板(かんばん):知名度・家の名前・メディア露出
  • 鞄(かばん):選挙資金や活動資金

この“三バン”が揃っているほど、選挙で有利に戦えると言われています。
世襲議員はこの三つを、親や祖父母からそのまま引き継ぐことができるため、初出馬の段階から圧倒的なアドバンテージを持ちます。

注記注記

たとえば「〇〇先生のお子さんなら信頼できる」と感じる有権者も多く、地域での安心感が得やすい面もあります。

政治家になるルートの少なさ

日本では、政治家を目指す明確なキャリアルートが存在しません。
欧米では、大学で政治学を専攻し、地方議員や政策スタッフからキャリアを積むのが一般的ですが、日本ではそうした仕組みが整っていないのです。

実際、多くの政治家は「秘書」や「地元後援会の関係者」などを経て立候補します。
しかし、そのポジションに入ること自体が「コネ」や「紹介」で決まるケースが多く、外部からの新規参入が難しい構造になっています。

注意注意

「実力があっても入り口に立てない」ことが、政治の多様性を狭めているとも指摘されています。

地元との“信頼関係”の継承

世襲の強みは、資金や名前だけではありません。
長年地域に根付いた人とのつながりも引き継がれます。
たとえば、親が地元行事に参加し、住民と信頼関係を築いてきた場合、子どもがそのまま「次の候補者」として受け入れられやすいのです。

逆に、新しく立候補する人が同じ地域で認知されるには、地道な活動と時間が必要です。
だからこそ、有権者の側も「見知った顔」に安心感を覚え、世襲候補を選ぶ傾向が残っているのです。

ヒントヒント

地方によっては、親子三代で政治家という家庭も珍しくありません。地域密着の歴史が、信頼の積み重ねとして機能しているのです。

批判と見直しの動き

一方で、「世襲によって政治が閉ざされる」という批判も根強くあります。
特定の家庭や派閥が長く権力を握ると、新しい視点や価値観が入りにくくなるためです。
また、「親の後を継ぐために政治家になる」ケースでは、理念や使命感が薄くなりやすいとも言われます。

こうした流れを受けて、野党の一部や市民団体は「世襲禁止法案」や「同一選挙区での連続世襲を禁止する案」を提案してきました。
しかし、現状では法的な制限はなく、あくまで各政党の判断に委ねられています。

注記注記

自民党でも過去に「三親等以内の世襲制限」を議論したことがありますが、実現には至っていません。

「二世だからこそできる政治」もある?

興味深いのは、「世襲=悪」とは言い切れないことです。
政治家の子どもとして育った人は、幼い頃から政治や行政に触れる機会が多く、現場感覚や経験値を自然と身につけています。
また、家族を通じて培った「人脈」や「国際的なネットワーク」を活かして成果を上げる議員もいます。

たとえば、若手の世襲議員がSNSを使って政治を発信するケースも増え、
「古い政治のイメージを変える存在」として注目されることもあります。

ヒントヒント

世襲であっても、選挙で選ばれるのは有権者。投票によって、評価を下すことができる点が民主主義の強みです。

政治への関心が低いことも背景に

もう一つの背景として、有権者の政治離れも挙げられます。
選挙に興味を持つ人が減れば、新しい候補者が育ちにくくなり、結果的に「既存の政治家の子ども」に頼る構造が強まります。
つまり、「世襲が多い=市民の関心が薄い」という面もあるのです。

注意注意

無関心が続くと、政治が“特定の人たちだけの世界”になってしまいます。

変える力は「選ぶ側」にある

最終的に、世襲議員を増やすか減らすかを決めるのは、有権者の投票行動です。
地盤や家柄だけでなく、「何を目指して政治をしているのか」を見極めることが求められます。

若い世代が政治に関心を持ち、立候補する環境を整えることも大切です。
たとえば、選挙活動のオンライン化や寄付文化の浸透が進めば、資金や地盤のハードルも少しずつ下がっていくでしょう。

おわりに

「世襲議員が多い」という現象は、単なる“親の七光り”ではなく、制度・文化・社会意識が重なった結果でもあります。
お金、仕組み、信頼関係――それぞれの要素が今の政治構造を形づくっているのです。

その中で、私たちができることは、ただ批判することではなく、
「なぜそうなっているのか」を知り、次の一歩を考えること。

それが、暮らしと政治を“つなげて考える”一歩になるように。

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