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どうやって金額が決まるの?

2025年10月24日 ピックアップ特集

はじめに

毎年のように耳にする「最低賃金の引き上げ」。
ニュースでは「過去最大の上げ幅!」と報じられますが、その裏側では何が起きているのでしょうか?

今回は、最低賃金がどのようにして“数字”として決まるのかを見ていきます。労働者・企業・専門家、それぞれの立場が交わる“話し合いの舞台”をのぞいてみましょう。

年に一度の「夏の攻防」

最低賃金の改定は、毎年夏ごろに行われます。厚生労働省のもとにある「中央最低賃金審議会」が中心となり、次の3者が集まって議論を重ねます。

  1. 労働者代表:連合など労働組合の関係者。生活を守る立場から「もっと上げるべき」と主張。
  2. 使用者代表:経済団体や企業側。経営への負担を考慮して「急な引き上げには慎重に」と訴えます。
  3. 公益代表:大学教授や専門家。双方の意見を聞き、社会全体のバランスを見ながら調整役を担います。
注記注記

🗣️ 三者構成の議論が、最低賃金を形作る。労働・経済・社会の“交差点”で決まっていく。

この三者が何度も話し合いを重ね、最終的に「全国平均で何円引き上げるか」という**“目安額”**を出します。これがニュースで報じられる「平均43円引き上げ」といった数字です。

「目安」から「実際の金額」へ

中央審議会が示すのはあくまで“目安”。その後、都道府県ごとに設けられた「地方最低賃金審議会」で、地域ごとの金額を決めていきます。

この段階では、

  • 地域の物価や生活費
  • 雇用状況
  • 中小企業の支払い能力
  • 生活保護とのバランス
    など、多くのデータが議論に使われます。
ヒントヒント

💡 「中央で方向性」「地方で最終判断」。国と地域の“二段構え”で決まるのが日本の最低賃金制度。

最終的に都道府県知事が決定し、厚生労働大臣が公示。毎年10月ごろから新しい最低賃金が適用されます。

どうして“毎年上がる”の?

かつては据え置きの年もありましたが、近年は毎年引き上げが続いています。背景には、政府が掲げる「全国平均1,000円を目指す」という方針があります。

しかし、ただ上げれば良いというものでもありません。中小企業の経営を圧迫すれば、倒産や雇用減少にもつながりかねない。だからこそ、審議会では“スピードと持続性”のバランスを取る議論が続いています。

注意注意

⚠️ 引き上げのスピードが速すぎると、企業がついてこられず、結果的に雇用が減るリスクも。

1円をめぐる攻防

審議会では、たった1円の違いをめぐって激しい議論が交わされることもあります。

労働側は「物価が上がっているのに賃金が追いつかない」と訴え、
企業側は「原材料費や光熱費も上がっており、人件費まで上げる余裕がない」と反論。

どちらも“正しい”からこそ、折り合いをつけるのが難しい。そんな中で公益代表が中立の立場から調整し、社会全体で納得できるラインを探るのです。

「格差」をどうするか

日本の最低賃金には、地域ごとに大きな差があります。たとえば、2024年度では東京と沖縄の差は200円以上。フルタイムで働くと、年間で約40万円の差にもなります。

この格差をどう縮めていくかも大きな課題です。地方に人が定着しない背景には「給料の差」もあるとされ、最低賃金の地域差は人口減少や地方創生にも直結しています。

注記注記

📈 政府は“地域間格差の縮小”を長期目標に掲げている。経済構造の違いをどう埋めるかが今後の焦点。

政治の影響も大きい

最低賃金の方針は、政権の政策とも深く関わっています。賃上げを重視する政府では「引き上げペース」を加速させ、経済の停滞を懸念する政権では“慎重姿勢”を取ることも。

つまり、選挙の結果によって、最低賃金の動き方も変わるのです。

補助金と支援策

中小企業の負担を和らげるため、政府は「業務改善助成金」などの支援制度を設けています。これは、賃上げと同時に生産性向上に取り組む企業を支援する仕組みです。

たとえば、

  • 省エネ機器の導入
  • 業務効率化ソフトの購入
  • 人材育成の研修費補助
    などに助成金が使えるケースがあります。
ヒントヒント

💡 「最低賃金を上げる=企業の努力を支える仕組み」でもある。賃上げの裏には、支援と改革がセットになっている。

まとめ

  • 最低賃金は「中央」と「地方」の二段構えで決まる。
  • 労働者・企業・専門家の三者による“話し合い”が基本。
  • 政策や経済状況に応じて毎年見直され、社会全体のバランスを取っている。

最低賃金は、ただの数字ではありません。そこには、暮らしを守るための知恵と、経済を回すための工夫が詰まっています。

次回予告

第3回では、「誰のための制度なのか?」をテーマに、最低賃金の“光と影”を考えます。働く人・企業・社会、それぞれにとっての意味を見つめ直していきましょう。

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